新型コロナウイルス感染症が猛威を振るうなか、診療所においては院内での感染のリスクや、患者による受診控えといった影響が出ており、外来患者数の減少が多くのクリニックで報告されています。こういった背景から、クリニック内での感染を防ぎ、安心して患者が来院できる環境を作るために、新型コロナウイルス対策が求められています。
感染拡大による受診環境への影響
全世界で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が蔓延しているなか、わが国でも4月7日に7都府県(東京、神奈川、千葉、埼玉、大阪、兵庫、福岡)に緊急事態宣言が出され、14日にはさらに全国に緊急事態宣言が発令されました。感染拡大を止めるため、全国民に不要不急の移動を避け、自宅で待機することが求められています。
また、医療機関でのクラスターが多数報告されており、院内での感染を恐れてクリニックの待合室で待ちたくないという患者さんが増加しています。このような状況のなかで、外来が大幅に減少するクリニックが増えており、実際の医療サービスに大きな影響が出てきています。
初診から電話診療、オンライン診療が可能に
4月10日には、厚労省が初診から電話・オンライン診療を認める通知を発出しました。これまで頑なに、「電話やオンラインでの診療はあくまで再診で、初診は対面で」という姿勢を貫いてきた方針から、一気に「初診からでも対応可能」とした今回の変更は、大きな英断であったと思います。それほど、医療現場は切迫しているという危機感の表れではないでしょうか。「医療機関でのクラスターをどう防ぐか」、それと同時に「患者へ適切な医療をどう継続できるか」という観点から、できるだけ来院せずに、継続した医療サービスが受けられる体制整備が必要と考えたのでしょう。
関連通知:新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その10)
https://www.mhlw.go.jp/content/000621316.pdf
同通知を受けて、4月24日に厚労省は「対応医療機関リスト」を公表しました。そのリストによると、全医療機関の約1割にあたる1万件の医療機関が、電話およびオンラインでの診療に対応としています。
診療所での新型コロナウイルス感染対策
一方で、新型コロナウイルスに感染疑いの患者が実際に来院した場合、診療所ではどのように対応すればよいのでしょうか。国立感染症研究所及び国立国際医療研究センター国際感染症センターが作成した「新型コロナウイルス感染症に対する感染管理」が改定されたことを受けて、厚労省では4月7日に対応策をまとめた通知を発出しています。
関連通知:医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応について(その3)
https://www.mhlw.go.jp/content/000620705.pdf
同通知によると、新型コロナウイルス感染症の患者、もしくは疑い患者を診察する場合は、
①標準予防策に加え、接触、飛沫予防策を行う
②診察室および入院病床は個室が望ましい
③診察室および入院病床は陰圧室である必要はないが十分換気する
④上気道の検体採取を実施する場合サージカルマスク、眼の防護具、長袖ガウン、手袋を装着する
⑤エアロゾルが発生する可能性のある手技はN95マスク、眼の防護具、長袖ガウン、手袋を装着する
⑥患者の移動は医学的に必要な目的に限定する、職員(受付、案内係、警備員など)も標準予防策を遵守する
といった対策による感染防止を求めています。
ICTを活用した感染症対策
クリニック内での感染防止には、3密(密集、密閉、密接)を防ぐ必要があります。具体的には、
①待合室での混雑緩和(密集対策)
②患者同士、患者とスタッフの接触減少(密接対策)
③定期的な待合室の換気の徹底(密閉対策)
といった状況を作り出すことで、患者の来院をコントロールできる「予約システム」の活用が効果的であると考えます。
予約システムを導入すれば、自宅にいながらオンラインで「来院状況(混雑状況)」が確認でき、オンラインでホームページやスマホから自宅で予約が可能となり、診療時間が近づいたら来院するという運用に変わります。新型コロナウイルス感染を恐れ、受診を控えようと考える患者にとって、安心して来院できる環境を作り出すことが可能になるのです。
また、クリニックにとっても、患者を守り、スタッフを守り、クリニックを守ることが可能になると考えます。