現在、政府主導で議論が進んでいる「働き方改革」。今後「働き方改革」は、医師やコメディカルの働き方、クリニックの運営にどのような影響を及ぼすのでしょうか。本シリーズでは、「働き方改革」とは何なのか、また、今後医療機関における働き方改革はどのような方向性で進んでいくのか、そして、クリニックをはじめとする医療機関において今後検討すべきポイントについてシリーズでレポートします。
前稿では、医療における働き方改革の検討がどのように進められつつあるのかについて、その概要を見てきました。本稿では、医師の働き方改革の出発点となる現時点での医師の働き方のうち、大きな焦点となっている「勤務時間」について、2017年3月に発表された「医療勤務環境改善マネジメントシステムに基づく医療機関の 取組みに対する支援の充実を図るための調査・研究事業報告書」、および、「医師の勤務実態について(資料)(厚生労働省 2017年8月、9月)」等を元にレポートします。
医師はどの程度「働きすぎ」なのか?
それでは早速、報告書および資料から詳細なデータを見ていきましょう。
下図(図1)は、2012年に総務省が発表した職種ごとの長時間労働(週60時間以上)の雇用者(年間就業日数200日以上・正規職員)の割合です。
出典:平成24年就業構造基本調査(総務省)
これによると、60時間を超える者の割合が雇用者全体の14%である一方、職種別では、医師は最も高い41.8%となっています。
また、最長勤務時間の調査(図2)でも、平均15.4時間、長い場合には36時間超と、医師が非常に長い時間連続して勤務につかざるを得ない現状があることがわかります。
出典:医療勤務環境改善マネジメントシステムに基づく医療機関の 取組みに対する支援の充実を図るための調査・研究 事業報告書(厚生労働省 平成28年)
一方、病院と診療所の勤務実態の違いを見ると(図3)、週当たり勤務時間が60時間以上の常勤医師は39%であり、そのほとんどが病院の常勤医師であることが明らかになっています。
出典:医師の勤務実態について(厚生労働省 2017年9月)
減らない医師の過労死
医師の過労死や働きすぎによるQOLの低下は、これまでも少なからずメディア等にも取り上げられ、議論されてきました。しかし、医師の勤務実態が改善しているとは言えない調査結果も報告されています(図4)。下記の通り、医師の過労死による労災請求件数は少なくとも減少傾向にはなく、むしろ増加傾向と見ることもできます。
出典:働き方改革実行計画を踏まえた時間外労働の上限規制等について(厚生労働省 2017年)
大きすぎる医師の負担と、それを前提とした日本の医療システム。今回の医師の働き方改革では、第1回でもお伝えしたとおり、これから約4年間ほどの時間をかけて、医療法の改正も視野に進められていくことになります。
以上、本稿では、これまでに公表されている調査結果や報告書を元に、医師の働き方の現状を勤務時間に焦点をあてて見てきました。次稿では、医師の働き方改革のその他のポイントについてお伝えします。