電子カルテのデータをクリニック経営に活かす

電子カルテのデータをクリニック経営に活かす

電子カルテは何のために導入するのでしょうか。レセプトコンピュータ(以下、レセコン)であれば、「診療報酬請求事務の効率化のため」とすぐに答が思い浮かびますが、なぜか電子カルテの場合は明確な解答が出てきません。電子カルテには明確な定義が存在せず、それぞれが描くイメージがバラバラなためではないかと思います。そこで本稿では、電子カルテを導入する目的を整理し、今後電子カルテをどのようにクリニック経営に活かすべきかを考えてみます。


クリニックを経営するうえで、電子カルテに求められている機能を挙げると、以下のようになります。

  • (1)診療内容を適切に請求につなげる
  • (2)患者情報を適切に管理し活用する
  • (3)経営に必要なデータを見える化する

ここでは、それぞれの背景について詳しく見ていきます。

(1)診療内容を適切に請求につなげる

紙カルテとレセコンが主流だったころは、ドクターが紙カルテに記載した内容を、専門の医療事務スタッフが診療報酬点数表に基づいてレセコンに入力し、レセプト(診療報酬明細書)を作成していました。このころは、紙カルテの内容とレセプトを一致させるために、診療報酬の請求ロジックを理解した医療事務スタッフが重要な役割を担っていたのです。

一方電子カルテでは、レセプトをチェックする機能が電子カルテに搭載されていれば、請求ロジックに詳しい医療事務スタッフがいなくても、適切なレセプトが作成できます。ドクター自らが電子カルテに記事(診療内容)とコスト(診療報酬点数)を直接入力することで、自動的に適切なレセプトを作成できるのです。そうすると、レセプト作成のための手間と時間とコストが削減できることになるため、この機能が電子カルテ導入の第一の目的に位置付けられます。

(2)患者情報を適切に管理し活用する

電子カルテには、氏名、年齢、住所などの個人情報と、保険情報、過去の診療歴や病歴などが蓄積されます。診療歴の中には、患者の主訴に始まり、所見や治療内容(薬、検査、処置、リハビリなど)、病名、指導内容、予約情報など多岐に渡る情報があります。これらのデータは、電子カルテに搭載されている検索機能や、外付けのPMS(Practice Management System:医院経営システム)などを利用することで活用が可能です。

たとえば、患者さんの来院動向(時間、曜日、場所)等の分析から、季節ごとの疾患傾向、患者の既往歴などを分析することで、CRM(Customer Relationship Management)として電子カルテを活用でき、クリニックのマーケティングが可能になるのです。

レセコン時代でも患者の個人情報とコストの情報は蓄積されてきましたが、より包括的な診療情報や周辺情報を組み合わせることで、さらなる活用が期待されています。

(3)経営に必要なデータを見える化する

クリニックを経営していくうえで、「患者数」や「患者一人当たり単価」「診療行為別点数」などは、年を追って時系列に蓄積することで、リアルタイムに比較できます。クリニック経営は毎日変化していますから、それらの情報が何か月も遅れて出て来るようでは、問題点を的確に把握することは難しいでしょう。

かつて、クリニック経営といえば、立地さえよければ患者さんが自然に集まり、なんとなくできていました。競合のクリニックがまだ少なく、診療報酬改定率が右肩上がりだった時代の話です。

しかし現在、我が国はバブル崩壊以降の長引くデフレ経済下にあります。クリニック同士の競争も激化し、改定率も上がりませんので、現状をリアルタイムに把握し逐次対策を打つことは、クリニック経営において大切な戦術となっています。


電子カルテの導入目的は、診療データを蓄積し、経営に活かすためと私は考えています。

先に挙げた電子カルテとPMSを利用し、経営に大切な情報をリアルタイムに得る重要性は、いやがうえにも増しているといえるでしょう。

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