診療所の「待ち時間」対策

待ち時間は診療所に対する患者の不満で常に上位にあるだけでなく、診療所側にとっても大きな問題です。

待ち時間の不満は、中長期的に患者数の減少につながり、またコストアップ(残業代、人件費、駐車場代など)や、職員のストレス(定着率の悪化、ミスの誘発)、医師のストレス増にもつながります(詳しくは医院にとって、待ち時間対策が重要な理由)。

待ち時間の原因として、ある時間帯や曜日に患者が集中して来院することや、患者数に対して対応する職員数がマッチしていない、そもそも受入可能なスペースや職員数に対して患者数が多すぎる、または、業務の効率が悪いなどの理由が考えられます。

そこで、以下のような待ち時間対策が考えられます:

①体感待ち時間を軽減

 患者が自分の順番を把握できれば、待ち時間の不満が緩和されます。最近のクラウド型の順番管理システムは、患者が自分の順番をスマホでも確認できるので、院内で待つ必要がなくなり、安心して外出ができます。また、自院のホームページでリアルタイムに混雑状況を表示できる機能があれば、患者は混雑していない時に来院してくれるようになります。

 さらに、「患者から順番を聞かれることが減る」「一時外出や戻りの管理が不要に」「診察室への入室、退出の入れ替えがスムーズに」など、スタッフの負担軽減にもつながります。我々の調査では、診察までの時間が1時間以上になると49%の患者が不満と感じていたところを、自分の順番が番号で表示される場合、不満は10%に軽減しました。

図1:順番が分かると待ち時間の不満は減少する

図1:順番が分かると待ち時間の不満は減少する

②患者数の平準化

 オンライン予約システムを使って、患者が比較的少ない曜日(例えばパート医師の診察日)や、通常空いている時間帯に予約枠を多く設定し、逆に混んでいる時間帯には予約を設定しません。患者はオンライン予約システムを使って、空いている予約枠の中から希望の日時を選択する。その結果、従来は空いているはずの日時に患者が誘導されます。また、院内掲示版やホームページ上で空いている曜日や時間を告知したりすることも平準化に効果があります。

図2:患者数の平準化

図2:患者数の平準化

③自動再来受付機の導入

 受診患者の7割から8割は再来患者ですから、もし、再来患者が受付機を通じて自分で受付をしてくれると、受付作業の大きな負担軽減になります。

図3:Bee患者自動受付機

図3:Bee患者自動受付機

④順番管理システムでペース配分

 診察室で順番管理システムの画面を通じて患者の待ち状況(待ち患者数、終了患者数、患者ごとの滞在時間、外出中などのステータス)をリアルタイムに把握できます。状況に応じて、診察のペースを調整します。混んでいる時は急ぎのペースで、空いている時は一人一人に時間をかけることができます。また、待ち時間が長くなった患者に対しても気配りができます。例えば「本日は患者様が多く受診してお待たせしてスミマセンでした、次回は火曜日が比較的空いていますよ」などの声かけも効果的です。

図4:順番管理システムの診察室操作画面

図4:順番管理システムの診察室操作画面

⑤スタッフが複数の職務をできるように

 診療開始直後は、まず受付が忙しくなり、その後は検査、診察室と忙しさのピークが移行します。限られたスタッフ数で業務の効率化を上げるには、一人のスタッフが複数業務をできるよう、普段からトレーニングしておくと良いでしょう。業務効率が良くなる以外に、違う職務への業務理解も深まり、スタッフの能力向上とチームワーク向上にもつながります。

⑥診察時間枠を増やす

 休診日を減らし(診察日を増やし)、診察開始時刻と終了時刻を変更し診察時間を増やすことで、患者がある程度は分散するため、混雑状況は緩和されます。スタッフと医師の勤務時間が長くなるため、スタッフのシフト調整とパート医師の増員も検討が必要かもしれません。経験的に、⑤と⑧を合わせて実施することで、コスト増にはならず、さらなる増患も加わり売上増、収益増につながります。

⑦診察室の入室/退室をスムーズに

 順番管理システムを使い、待合室で患者の診察で呼ばれる順番をテレビモニターで表示します。順番が近くになった患者が診察室前で待機することで、患者の入れ替えがよりスムーズになります。各患者で仮に20秒の時間短縮ができると、1日に100人の患者の診察では、合計約33分の時間削減になります。

⑧患者数と待ち時間を日々の記録・分析

 日々の患者数と平均待ち時間を数値化し、全職員で数値を共有することで、 “待ち時間に対する意識”は自然と高まります。仮に対策前の平均待ち時間が60分であれば、目標を平均待ち時間50分として、職員と一緒にどのようにすればこの数値目標が達成できるかチャレンジするのも良いでしょう。明確な数値目標があるほうが、より実現性が高まります。

 また、毎日患者数を記録することで、受診患者数をある程度、事前に予測することが可能になります。患者数の事前予測により、多数の患者数が予想される日には多めのスタッフ数を配置、少ない日は少な目のスタッフ数を配置(シフト表作成)することで、待ち時間を減らしながらも、スタッフ1人あたりの対応患者数を増やすことができます。これが医院の生産性向上につながり、隠れた大きなコスト削減につながります。

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