診療スピードアップは「つなぎ」に注目する

一般的に、患者さんが多いクリニックでは、待ち時間が長くなる傾向にあります。しかし、長い待ち時間は患者さんのストレスになりますし、医療スタッフにも様々なプレッシャーがかかります。「診療」をスピードアップできれば、時間当たりに診療できる患者さんの数は増加して待ち時間は減少しますが、診察を急げば患者さんを不安に思わせてしまいます。このような患者数と待ち時間のトレードオフは、果たしてやむを得ないことなのでしょうか。今回は診療のスピードアップ方法について考えます。

診療行為のつなぎ部分に注目する

 「診療」と聞くと、診察、検査、処置などがイメージされますが、それらにかかる時間自体を短くすると、患者さんの満足度は下がってしまいます。患者さんの立場からすると、「診療」とは来院してから診察・検査を受けて会計を済ませるという一連のフローで、できるだけ無駄なく有意義な診療を受けられるのが理想です。「診察・検査・処置の時間は十分に取られているが、全体にかかる時間は短い」という状態がパーフェクトです。そうすると、受付、診察、検査、処置などの「つなぎ」の部分をスムーズにすることが、診療スピードアップの一つ目のポイントになるでしょう。では、そのためにはいったい何をすればよいでしょうか?

問診票を活用する

 「つなぎ」を良くするためには、問診の活用が有効です。問診とは、患者さんが来院した際に、どんな症状で受診されたのかをあらかじめ知るために、症状を自己申告してもらうものです。問診票の記載は「初診時だけ」という場合と、「再診時」にもお願いしているという場合があります。再診時に行えば、前回とは別の症状で受診した場合にも対応できます。また、「予診」として別に看護師等が口頭で行っている場合もあるでしょう。これらの行為はいずれも、事前に患者さんのニーズを集め、適切な診察準備をするために行われます。この問診にスピードアップの秘訣があるのです。

 たとえば、耳鼻咽喉科であれば、耳、鼻、喉の症状で患者さんが来院されますが、耳であれば聴力検査が必要になる可能性が高くなります。聴力検査室はたいてい診療所に一つしかありませんから、検査が集中すれば待ち時間につながるでしょう。事前に検査の順番を把握しておくことで、検査の待ち時間を緩和可能です。また、喉に違和感があれば、ファイバーで確認する可能性があるので、ファイバーの準備が必要になります。

 ここで注目すべきは、今日は診察だけなのか、検査も必要になるのかを事前に全スタッフが理解することです。先回りをして準備しておくことがスピードアップの秘訣なのです。

疾患勉強会と情報共有ツールの活用

 問診の内容を即座に行動に移すためには、問診票の内容理解と情報共有が必要です。これは受付および看護師など部門間で協力して行う業務のため、定期的に疾患に関する「勉強会」を院内で開き、問診スキルや診療の流れを理解する活動を行っておくことが大切です。これにより、問診に書かれた患者さんのニーズを全スタッフがスムーズに把握でき、共通イメージをもって事前準備を進められるようになります。また、情報を部門間で共有するためには、電子カルテのメモ欄に記載したり、インカムで情報を流したりすることで、スムーズに情報伝達が行えるようになります。最近では、予約システムやWeb問診を導入することで、患者さんの来院前にニーズを把握し、準備を行うことが可能になっています。

クラークを活用する

 医師が診療の合間に電子カルテに入力をする場合、パソコンが得意でなければ診療時間の延長につながってしまいますし、たとえ得意であったとしても、患者さんが詰まってくれば「診療の合間」はどんどん減っていきます。

 もし、電子カルテの入力に時間が取られたり、負担に感じているならば、電子カルテの代行入力を行う「クラーク」の導入をお勧めします。クラークの育成には少し時間がかかりますが、育成できれば医師の負担軽減に大きく寄与できます(ちなみに、クラークの育成を専門に行っている機関もあります。外部に委託してもよいでしょう)。優れたクラークを配置している医療機関は、医師とクラークの連携により、診察が早くなることは間違いありません。

 また、診療をスピードダウンさせる一つの要因として、急な紹介状(診療情報提供書)の作成があります。診察は医師にしかできませんので、医師が書類を作成すると診察は止まらざるを得ないのです。この際も、クラークが有効に作用するでしょう。クラークが診療時間中や診療の合間に書類を作成できれば、医師はその内容を確認するだけで済むので、大幅な時間短縮につながります。

次回予約のタイムロスを緩和する

 定期的な受診が必要な疾患の場合、次回予約を取ることになりますが、ここにもスピードアップの工夫が潜んでいます。医師が患者さんに、「じゃ、次回はいつ来られますか」と投げかると、患者さんはそこから手帳を引っ張り出し、悩み始めます。次回の予定を即座に答えてくれる患者さんはほとんどいません。この予約調整の時間が長ければ長いほど、タイムロスにつながります。

 予約業務は医師の代わりに受付や看護師が行えますし、診察室内で行う必要もありません。予約調整の担当者と場所を決めることで、医師は次の診察に取り掛かることが可能なのです。

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