2020年初頭から始まった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大は、11月に入り再拡大が進み、1日2500名を超える新規患者が出ています。いよいよ第三波が現実となってきており、今後冬期に入り、感染拡大はさらに悪化することが予想され、しばらくはウィズコロナの状況が続くことが現実になっています。いつ終息を迎えるかわからないコロナ禍において、COVID-19をめぐる一連の騒動は、「医療サービス」の在り方に新たな変化を求めていると感じます。そのような状況で、改めて診療所経営にフォーカスし、数回にわたり、今後の対策を考えていきたいと思います。
コロナで何が変わったのか?
COVID-19は私たちの生活、そして診療所経営にどんな変化をもたらしたのでしょうか。まず、COVID-19の影響から、国民の感染症に対する意識が変わりました。我が国は、これまで感染症が大きく影響したのは遠い昔で、感染症は別の世界の話であり、我々には関係ない話と高をくくっていました。
しかしながら、COVID-19がこれほどまでに感染拡大している状況においては、そうはいっていられず、個々人が政府が提唱する「新たな生活様式」を守りながら生活することを余儀なくされています。ほとんどの国民がマスクをし、できるだけ距離をとり、様々な場面で密になる状況を避ける行動をとっています。
その結果、「患者」の受療行動にも大きな変化が生まれてきています。いま、診療所は「新しい受療行動」を踏まえた新常識で経営を行う必要が出てきていると言えるでしょう。
ウイズコロナは患者を減少させる
マスク着用、手洗い、3密を避ける行動など感染症対策が進むことで、確実にかぜ症状やインフルエンザ、花粉症などの季節系疾患が減少しています。また、コロナ禍で進んだ「働き方改革」の影響から、リモートワーク(在宅勤務)が推奨され、会社への通勤が明らかに減少しました。その結果、公共交通機関の利用は大きく減っています。これも季節系疾患の減少に一役買っています。
また、娯楽や飲食、イベントなどについても、ソーシャルディスタンスの確保が推奨されており、「人が集まるところ」をできるだけ避けるような行動が進んでいます。ヒトとヒトの接触が減ることで感染症、そして季節系疾患の減少が進んでいると言えるでしょう。
つまり、コロナ禍の個々の感染症予防の行動こそが、健康・予防活動にほかならず、病気になりにくい状況を作り出していると言えるでしょう。
購買行動の変化
また、コロナ禍で大きな出来事は、購買行動の変化です。百貨店や専門店で買い物をするという行動が大きく変わり、じわりじわりと増えていたオンラインでの購買が、一気にシフトしたと言えるでしょう。ネットショッピングの会社が軒並み好業績を上げ、一方で小売業界が大きく落ち込んでいることからも、それは明らかでしょう。このオンラインでの消費行動は、医療の世界にも少しずつ浸透していくことは避けられないのではないでしょうか。今後の第三波の状況が深刻化すれば、再びオンライン診療やオンライン服薬指導に注目が集まることが予想されます。コロナ禍では、いつも飲んでいる薬くらいはネットで買いたいと考えるのは当たり前の行動で、現在コンタクトレンズがオンラインで購入するケースが増えているように、医薬品の世界にも着実に進んでいくことが予想されます。
コロナは患者を減らし、デジタル格差を生み出す
このように、コロナ禍の現状認識としては、感染対策が進むことで、予防意識も高まり、診療所に来院する患者数の減少が起きており、このまま何も手を打たなければ今後も続いていくことが予想されます。
また、患者の医療サービスの消費に対する意識も変わろうとしています。今後、オンラインショッピングに慣れた患者たちは、自らでオンラインでできるもの(足りるもの)、オンラインでは難しいものという線引きを行っていくでしょう。その結果、それに対応できる診療所、できない診療所の格差、すなわちデジタル機器を使いこなせるかどうかが大きな格差として影を落とす状況が進むのではないかと予想します。