医療クラークの配置にかかる加算が有床診療所でも算定可能に

医療クラークのイメージ

 令和2年度の診療報酬改定では、超高齢化社会が進む状況を受けて「働き方改革」が重点テーマとなりました。「働き方改革」を進めるうえで医師の労働時間短縮が注目されており、これまで病院でしか算定できなかった医療クラークの配置にかかる加算が、有床診療所でも可能になりました。

医師事務作業補助体制加算は病院の3割に導入

 医療クラークの配置を評価した点数である「医師事務作業補助体制加算」は、12年前に新設されました。その後相次ぐ点数の引き上げや対象範囲の拡大などもあって算定医療機関は順調に増えており、平成30年時点で2828件の病院(全病院の約3割)で導入されています。 
 病院では、医師の隣に事務スタッフ(医療クラーク)が配置される体制が一般的になりつつあるといえるでしょう。新規開業の先生が、はじめからクラーク運用を希望されるケースが最近増えているのも、その表れではないかと思われます。

2020年改定で対象病床の範囲拡大、点数引き上げ

 令和2年度の診療報酬改定では、「働き方改革に向けての対策」が重点課題として盛り込まれました。この背景には、令和6年に予定されている医師の時間外労働の上限制約があります。あと4年しかない中で、準備を先行的に始めている医療機関を評価しようとしたものといえるでしょう。具体的には、(1)タスクシフティング・タスクシェアリング、(2)ICTの活用についての評価です。中でも勤務医の負担軽減を目的とした「医師事務作業補助体制加算」では、対象病床の範囲拡大と点数の引き上げが行われました。今回算定が可能になったのは以下のとおりです。

  • 回復期リハビリテーション病棟入院料(療養病棟)
  • 地域包括ケア病棟入院料/入院医療管理料(療養病棟)
  • 結核病棟入院基本料
  • 有床診療所入院基本料
  • 有床診療所療養病床入院基本料
  • 精神療養病棟入院料

 これにより、急性期・回復期・慢性期、そして病床を有する診療所にまで算定範囲が拡大されました。また、評価の見直しも行われ、一律50点の引き上げが行われています。医療クラークの配置が、勤務医の負担軽減に高い効果があると評価されたことになります。

医師事務作業補助体制加算の算定に向けて

 ここで、医師事務作業補助体制加算の算定要件をご紹介します。医療クラークができる業務は、

(1)医師の指示のもと、診断書などの文書作成補助 
(2)医師の指示のもと、診療記録への代行入力 
(3)医療の質の向上に資する事務作業(診療に関するデータ整理、院内がん登録等の統計・調査、医師等の教育や研修・カンファレンスのための準備作業等)
(4)行政上の業務(救急医療情報システムへの入力、感染症サーベイランス事業に係る入力等)への対応

が例示されています。

 一方、医療クラークができない業務としては、

(1)医師以外の職種の指示のもとに行う業務、診療報酬の請求事務(DPCのコーディングに係る業務を含む)
(2)窓口・受付業務 
(3)医療機関の経営、運営のためのデータ収集業務 
(4)看護業務の補助並びに物品運搬業務

等が挙げられています。つまり、医療クラークは受付・会計業務や看護師のサポート業務等を兼務できないことになります。

 また、医療クラークの配置に対して、「職員研修」が算定要件で定められています。具体的には、「配置から6か月間は研修期間として、業務内容について必要な研修を行うこと。なお、6か月の研修期間内に32時間以上の研修(医師事務作業補助者としての業務を行いながらの職場内研修を含む)を実施するものとし、当該医師事務作業補助者には実際に病院勤務医の負担軽減に資する業務を行わせるものであること」としています。

有床診療所への拡大で、1万5400件の医療機関が算定可能に

 ここで注目したいのが、医療クラークの配置に対する評価が有床診療所にすそ野を広げたことです。医療クラークの配置を算定可能な医療機関は、病院約8400件、有床診療所約7000件(あわせて15400件)となり、飛躍的に増加しています。勤務医から開業医にいたるまで、医師の負担軽減策の対象範囲が広がりました。
 これから電子カルテの導入を検討している医療機関は、電子カルテと医療クラークの配置をセットで行い、医師が働きやすい魅力的な職場づくりを目指して欲しいと考えます。

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