「来院マネジメント」の成功の秘訣

患者減少時代とデジタルシフト

長引くコロナ禍の「感染対策」の徹底により、かぜやインフルエンザといった「季節性疾患」が減った。また、感染リスクを考えて、受診間隔も長くなってきており、「受診控え」の問題が深刻になっている。患者数は全体的に減少しており、特に小児の患者数への影響が大きいと聞く。
一方、コロナ禍の巣ごもり生活で、インターネットの利用が大幅に増加している。中でも、高齢者は「コロナ禍でスマホを始めた」という声が多く、特にスマホによるネットショッピングが増えている。一般消費社会において、コロナ禍は急激なデジタルシフトを進めている。

競争が激化するいまこそ「来院マネジメント」

少ない患者数は、クリニック同士の競争の激化を招いている。少ない患者のパイを多くのクリニックが競い合っているため、患者に支持されないクリニックは徐々に患者を減らしていく。いつの間にか患者が半減したなんて事例は少なくない。このような状況下では、患者から選ばれるクリニックになるために、患者の「来院マネジメント」に注目する必要がある。来院マネジメントとは、患者が「来院しやすい環境」をいかに作り出すかということである。来院しやすい環境とは、来院する際の敷居を低くして、バリアフリーを進めることに他ならない。

デジタル・バリアフリー

 バリアフリーと聞くと、入り口の段差をなくしフラットにするという、リアルなイメージがあるだろう。しかし、バリアフリーはデジタル社会でもあり得る話だ。「パソコンが使えない」「スマホが使えない」「予約ができない」など、まさにコロナ禍で露呈された我が国の現状である。デジタル化を進めると、便利になるどころかバリアフリーに配慮していないと、かえって混乱してしまうのだ。
 デジタル・バリアフリーを進めるためには、患者の立場に立ったわかりやすい説明が必要になる。いままさに、受付の「説明力の強化」が必要不可欠になっている。これはいくら対策してもなかなか効果は実感しにくい。マニュアルに沿っていくら患者に説明しても、なかなか伝わらないという経験は誰にもあるだろう。人間の理解力は千差万別、様々であり、一筋縄ではいかないものだ。結局、マニュアル通りの一辺倒のやり方ではなく、患者に合わせた臨機応変な対応が重要となる。

患者の不満をどう解消するか

そもそも患者から支持されないのは明確な理由がある。患者が来なくなる理由は、何かしらの不満があり、現在のような口コミ社会では、その不満の声は一気に伝播していく。不満を決して放置してはいけないのだ。
患者の不満の上位は、今も昔も「待ち時間」と「医療スタッフの対応」である。この問題の解決を目指して、「待ち時間の短縮」と「職員の接遇レベルUP」がクリニック改善の重要なテーマであった。「待ち時間の短縮」は、予約システムの導入が進み、「職員の接遇レベルUP」は、マナー講師を招き、接遇研修が繰り返し行われている。システム導入や研修を行って、確かにある程度の改善効果はある。さらに改善効果を高めるためにはどうすればよいのだろうか。

改善効果を高める「徹底力」

それには、「徹底力」に注目する必要がある。徹底力について少し解説すると、1つは患者への説明をしっかり行い、予約システムの利用率を高めることであり、もう1つはスタッフの接遇研修の本質を理解していただき、常に研修内容を発揮できるよう、自分のものにしてもらうことである。
この徹底力を高める活動は、かなり地道な活動であり、近道はない。患者およびスタッフへシステムや研修の意味の説明を行い、クリニックの理念やクレドを通して価値観の共有を図るしかないのだ。院長は、「なぜ、待ち時間が悪いことか」「なぜ、予約システムを入れるのか」「なぜ、接遇が重要なのか」これを繰り返し説くしかないのだ。これを徹底的に行い、スタッフが院長のもとベクトルがあって、初めて導入効果が最大化されるのだ。

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