紹介状の増加に備えて書類発行体制を強化する

 

 令和4年度診療報酬改定において、「地域包括ケア」が前回に引き続きメインテーマとなっています。地域包括ケアを進める上で、「機能分化と連携」という考え方が根底にあります。「機能分化」とは、クリニック等はかかりつけ医として、外来をメインにゲートきぱーとしての役割を担い、地域の中核病院は入院をメインとして、かかりつけ医からの紹介患者を受け入れていくという考え方です。地域において紹介・逆紹介が積極的に行われる社会を目指しているのです。この社会においては情報連携として、「診療情報提供書」が重要な役割を担っています。

連携のための書類がどんどん増えていく

 令和4年度改定では、さらに機能分化を進めるために「紹介状なし患者の定額負担」を、現在の特定機能病院・一般200床以上の地域医療支援病院から「一般病床 200 床以上の病院」に対象範囲を拡大する方針が出されています。また、「診療情報提供料Ⅲ」の適用範囲の拡大として、腎不全を例に専門病院とかかりつけ医が案として出されています。さらに、看護師から関係機関への情報共有についても「看護情報提供書」として評価する案も出されています。これらの事項から、クリニックにおいては診療情報提供書など書類作成・発行の増加が見込まれており、これ以下の効率化するかは大変重要なテーマであると考えます。

書類作成をスタッフにタスクシフティング

クリニックにおいて、書類の作成は診療の流れを止めてしまう一つの原因です。この数が今後増えていくと考え、紹介・逆紹介が活発になればなるほど、書類の作成を医師が担うのではなく、スタッフを巻き込むことが大切であると考えます。もし、書類作成を医療クラークが完全ではなくとも代行できれば、診療中断なく書類を作成することが可能になります。つまり、「診療時間中に医療文書ができている」これは医療クラーク導入に対する大きな効果と言えます。

まずは自動・選択式で大筋を作成

では、書類を医療クラークにお願いするには、どうすれば良いのでしょうか。
「診療情報提供書」は、①宛先②作成日③自院の署名④患者情報⑤病名⑥紹介目的⑦既往歴・家族歴⑧症状・検査結果⑨治療経過⑩現在の処方、などから構成されています。
このうち、自動的にカルテから情報が入ってくるものは、①作成日(基本は本日の日付)、②自院の署名、④患者情報、⑤病名、などです。
また、事前に情報を登録しておけば選択式にできるのは、①宛先(医療機関名)と②紹介目的(精密検査、CT・MRI、入院、手術など)です。そして、カルテから単純に貼り付ければよい部分が、⑦既往歴・家族歴と⑧症状・検査結果、⑩現在の処方です。
もしクラークが、診療情報提供書の作成が必要になった際に、まずはこれらの項目を埋めるだけで、大きな時間短縮になることが分かるでしょう。ただし、電子カルテメーカーによって、医療文書の作成の仕方は違いますので、完全にこのままの手順ではないので注意が必要です。

治療経過は「ひな形」で時間短縮

残るのは、⑨治療経過ですが、この作成もひな形を用いることで時間短縮が可能となります。

(ひな形の例)
平素より大変お世話になっております。
〇〇を主訴に当院に受診された患者様をご紹介させていただきます。
当患者様は(経過〇〇)のため、精密検査が必要であると判断いたしました。
今後の加療よろしくお願いいたします。

このようなひな形を、精密検査、CT・MRI、入院、手術といった紹介目的ごとに作成しておけば、紹介目的が分かれば、医療クラークによる下書きが可能となるのです。医師はブランクになっている、主訴と経過を入力するだけで済むのです。

主訴や経過も口頭指示で記入が可能

 主訴や経過についても、普段から医師の隣でカルテを書いているクラークであれば、慣れてくれば、医師による口頭指示で書くごとができるようになるでしょう。カルテを書く行為自体が医療文書作成の練習にもなっているのです。そこまでクラークに負担をかけたくないと考えるならば、「音声入力システム」を検討しても良いかもしれません。音声入力であらすじを入力し、クラークに修正してもらう方法です。

まとめ

医療文書の作成ステップは以下の通りです。
ステップ① 自動化・選択式で大筋を作成する
ステップ② 治療経過はひな形を選択する
ステップ③ 主訴と経過は医師による口頭指示で作成(音声入力も含む)
ステップ④ 医師が最終的に見直して発行する
クラークに医療文書の作成を教える際も、①②③と順に教えていくことで、スムーズに力をつけていただけると思います。

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