デジタル化対応に合わせて「業務分担」を行う

新型コロナ上陸から1年半

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大始まって約1年半が経ちました。2021年2月からは医療従事者、そして高齢者とワクチン接種が順次開始され、これで収束に向かうと期待されましたが、いまだ収束には程遠い状況です。7月に入り第5波と呼ばれる感染拡大フェーズが来ています。東京に緊急事態宣言が出される最中のオリンピック開催という異常事態が続いています。

医療界の働き方改革は進んだのか?

「新型コロナ」は患者の受療行動に大きな変化をもたらし、受診控えに代表される「患者減少時代」が到来しています。また、わが国の「働き方」にも大きな変化をもたらしており、リモートワーク、在宅ワークといったデジタルを活用した「働き方改革」が進んでいます。一方で、医療の世界では「働き方改革」が進んでいるかと考えるとあまり変わっていないように感じます。例えば、鳴り物入りで始まった「オンライン診療」も対面診療に比べて大きな業務効率化にはつながってはおらず、デジタルが苦手な場合は、かえって業務が増えていることもあるように感じます。オンライン診療システムを導入しても、活用できていない診療所も多いのではないでしょうか。

患者減少で忙しさは軽減しているか

 このような状況下で、クリニックは経営の基本に立ち戻り、自らの状況を棚卸する時期が来ていると感じます。院長に「忙しい状況は改善しましたか」という質問を投げかけたいのです。患者が減っている状況では、本来、仕事は減っているはずで、忙しさは軽減しているはずなのです。しかし、急速に進むデジタル化の波に翻弄され、デジタル化の対応が新たに加わることで、仕事が減っていないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

業務分担を見直すタイミング

いまこそ「タスクシフティング」すなわち業務分担を見直す時期がやってきていると感じます。業務分担は、開業時に決めたものが、その後継続していることがほとんどです。「この仕事は〇〇さんの仕事」と、いったん決まるとなかなか見直すタイミングは難しいのもです。院長に仕事が集中していて、業務分担の見直しが行われていないならば、新業務も院長が担当することになり、院長は忙しいまま変わらずに苦しんでいることになります。
このように見直しに踏み切れない状況で、「デジタル化対応」という新しい仕事が増える時こそ見直しの絶好のタイミングと言えるでしょう。

分担見直しの流れ

 業務分担を見直すためには、
① 各人の業務を書き出す
まずは受付スタッフ、看護師、医師(院長)の業務を棚卸します。箇条書きで、できるだけ簡潔にまとめてください。
② 業務にかかる時間を書き出す
次に、その業務にかかる時間を明確にします。この時間は厳密ではなくて良く、あくまで目安として書き出します。
③ 新たに増加する業務を書き出す
現状の業務把握ができたならば、そこに新しく増える業務を加えます。
④ 業務分担の見直しを行う
最後に、業務バランスを考えて再配分を行います。医師が業務を依頼する絶好のタイミングです。「断られるのではない」という恐怖をいったん横において、勇気をもって依頼をしてみてください。

医師が診療に集中できる環境を作り出す

生産性を高めるためには業務の標準化を行ったうえで「組み換え」が必要です。クリニックにおいて稼ぎ頭は医師ですから、医師の仕事をどんどん割り振っていくことで、生産性が高まっていきます。医師が診療に集中できる環境を作り出すのです。
例えば、診療においては「カルテの作成」「書類の作成」などはクラークを育成すれば、依頼ができます。仕事を依頼する際は、引継ぎ準備が必要なことは忘れてはなりません。ここをおろそかにすると、上手に引き継げません。
それ以外にも、ホームページやSNSなど広報活動もスタッフに分配しても良いでしょう。特に、ホームページやSNSは若いスタッフの方が向いている可能性が高く、配分したことで更新頻度が高まったという事例も多くあります。
デジタル化への対応など新しい業務発生時は業務分担の見直しのタイミングと考え、是非取り組むことをお勧めします。

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