スタッフのモチベーションUPの秘訣

 2021年8月現在、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の感染拡大は、過去最大の陽性者を記録し、重症者の増大を受けて病床が逼迫し、入院調整、在宅での対応と大変な状況となっています。その影響からかクリニックにおいてもコロナ関連の問い合わせが増えており、受付がその対応に追われるという状況が起きています。
新型コロナの陽性者の増加に合わせて、患者が急に増えたり、また急に減ったりと、患者数が乱高下し、なかなか一定にならない状況が続いています。このような通常では起きえない異常事態が続くと、スタッフの心身の疲労もピークに達しているのではないかと危惧します。そこで、今回はスタッフの「モチベーション」について考えてみたいと思います。

おじさんの小言はモチベーションを下げる

 「モチベーション」を辞書で引くと、「やる気」「意欲」「動機」などの意味で用いられるとされます。また、「行動を起こす契機となる刺激や意欲」といったニュアンスで用いられるとも記載されています。これらの意味から考えると、内的・外的に関わらず何らかの「動機付け」によって、モチベーションが上下すると推測されます。
 この「動機付け」はなかなか難しく、例えば、朝礼で訓示をしたり、その都度指導をしたりしても、かえって逆効果なケースもあります。「みんなの前で注意しないで欲しい」と言われたりすることもあります。私も含めて「おじさんの小言」を好んで聞きたい人はいません。その行為自体が、いまの若い人の考え方には合わないようです。その人のためにと思っても、モチベーションがかえって下がってしまう原因にもなりかねません。

スタッフの話を聞く時間が取れない

 また、日々忙しい業務の中で、「スタッフの話を聞く時間を確保するのが難しい」という声をよく聞きます。多くのスタッフを抱えるクリニックであれば、それは多くの時間と労力が必要になります。一方で、定期的に「個別面談」を行っていたり、「朝礼」「院内勉強会」などを活用しているというクリニックもあります。
まず、大切なのはスタッフとコミュニケーションをとる「頻度」を増やことです。1日の通常業務の中に、コミュニケーション機会をどれだけ盛り込めるかが重要なのです。これを受付、看護師、技師など分け隔てなく機会を作るためには、それなりの仕組みが必要になります。毎日の「朝礼」や「院内勉強会」がその仕組みの具体的な例となります。

院長はなるべく話さない

次に、様々なコミュニケーションの機会をとる際に、「いかにスタッフの話を聞くか」、言い換えれば院長が一方的に話さないようにすることが重要です。この「聞くに徹する」ことを実践するためには、主導権をスタッフに渡す必要があります。朝礼や院内勉強会での、院長の出番を極力減らし、スタッフ主導で行うようにするのです。それらのやりとりを、院長は注意深く観察し、個別面談時のネタにするのです。
最初のうちは運営もたどたどしく、内容も薄いかもしれません。しかし、それは時間とともに成長していきますので、温かく見守ってあげてください。自主性を伸ばすためには、まずはやらせてみることが大切で、内容やレベルは二の次で良いのです。

役割を与え、できたら「褒める」

 モチベーションは本来、「内的」に内から湧き上がるように高まることが良いのでしょうが、自らモチベーションを高められる人は多くいません。どうしても、受け身になりがちです。つまり、外からの働きかけが必要となるのです。
そこで1つの方法として、「役割を与え、できたら、褒める」ということをお勧めしています。褒めるというのは、一定の成果に対して評価することです。評価と聞くと、金銭的な報酬をイメージされる方もおられるでしょうが、金銭は一過性であり、不公平感が伴いますのでお勧めできません。すぐ実践できることは「褒める」ことです。

この褒めるという行動は、「マズローの欲求5段階説」の承認欲求にあたります。褒めて欲しいという欲求は誰にも備わっている基礎本能と言えるでしょう。しかし、これまた褒めるタイミングを間違えると、おべんちゃら、ご機嫌取りと、マイナスに働いてしまいます。正しく褒めるためには、「役割を与え、できたら褒める」という原理原則を守ることが大切なのです。まずは誰でもできる簡単な役割を与え、それを一つ一つクリアするたびにレベルを上げていき、必ず忘れずに評価するという仕組みを業務の中に盛り込むことが大切なのです。

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